取扱説明書｜Anshin Hedge Manager（Worst/Hybrid優先ロジック対応）v1.2.3
本EAは、既存のナンピン／グリッド／裁量ポジションに被せて運用する「ヘッジ管理層」です。口座全体の含み損悪化を抑えるバッファーストップ（ヘッジ）に加え、最悪チケット優先（WORST）・ハイブリッド（HYBRID）などの優先モードで、ヘッジ利益を使って本体の含み損を効率よく相殺します。既存EAの売買ロジックは不要な変更なく、Magic等で識別して統合管理できます。
1. 動作要件と前提
- プラットフォーム：MetaTrader4（Build 600+）
- 口座条件：両建て（ヘッジ）許可の口座
- 適用：1通貨ペアにつき本EAは1枚推奨
- 他EA併用：可（Magic分離を厳守）
- テスト前準備：対象TFの履歴データを十分にダウンロード
2. クイックスタート（30秒）
- 対象ペアのチャートにEAをアタッチ
- 監視範囲：
ManageAll=trueまたはMagicMainに対象のMagicを指定 - ヘッジ相殺機能：
UsePairOffset=true、PairOffsetTightSpread=true - 優先モード：
UnwindModeを HYBRID（初期推奨）または WORST に設定 - （任意）同梱の.setプリセットを読み込み（HYBRID / WORST）
3. 主要パラメータ（実務解説）
3.1 識別・対象
InpSymbol：空＝現在チャート。別シンボルのリモート管理時に指定ManageAll：true＝すべてのMagicを監視（ヘッジMagicは自動除外）MagicMain：監視するメインEA／裁量のMagic（0＝全て）MagicHedge：本EAのヘッジ専用Magic（他EAと重複禁止）
3.2 ヘッジ相殺（Pair Offset）
UsePairOffset：ヘッジ利益で本体の含み損を部分決済で相殺する機能をONPairOffsetTargetMoney：相殺の目標金額（口座通貨）PairOffsetMinLots：最小相殺ロット（ブローカーの最小ロット／ステップと整合を）PairOffsetTightSpread＋MaxSpreadPipsOffset：相殺のトリガーをスプレッドが狭い時に限定StrictNonNegative：相殺後PnLが負に落ちないよう安全側で丸め
3.3 優先モード（どの玉から減らすか）
UnwindMode（列挙）：- WORST_TICKET：損失が最も大きいチケットを優先（維持率の回復を急ぐ）
- EASIEST_FIRST：損失・価格距離・ロットを加味し、剥がしやすい玉を優先
- IMPACT_FIRST：BEP（建値）前出し効果が高い玉を優先
- HYBRID：EASIEST と IMPACT を0.5/0.5でブレンド（初期推奨）
BudgetSafety：ヘッジ利益のうち何割を予算化するか（例：0.90=90%使用、目減り対策）
3.4 ガード・環境依存
FilterSpread/MaxSpreadPips：高スプ時の操作抑制SlippagePoints：許容スリッページMarginLevelGuardMin/FreezeAddMinLevel：証拠金維持率の安全域（新規／追撃停止の境界）MinLotStep：ロットステップ（ブローカー仕様に合わせる）ActionCooldownSec：連続操作のクールダウン
4. 仕組み（アルゴリズム概要）
- ヘッジ利益の抽出：反対サイドの含み益ヘッジから、使用可能利益を
BudgetSafetyで予算化 - 優先モードで対象選定：WORST/EASIEST/IMPACT/HYBRID のスコアで相殺対象チケットを決定
- 部分決済（相殺）：
PairOffsetMinLots・MinLotStepを守りつつ、PairOffsetTargetMoney以上の合成PnLになるよう本体ロットを削減 - スプレッド制御：
PairOffsetTightSpread有効時は、MaxSpreadPipsOffset以内でのみ実行
5. 推奨プリセット（.set）
テスターの「パラメータ」→「読み込み」で下記プリセットを利用できます（どちらも UsePairOffset=true ／ PairOffsetTightSpread=true を既定ON）。
- HYBRID版：
UnwindMode=HYBRID、BudgetSafety=0.90、PairOffsetTargetMoney=5.0 - WORST版：
UnwindMode=WORST_TICKET、BudgetSafety=0.88（やや保守）、PairOffsetTargetMoney=5.0
※ ブローカーの最小ロット／ロットステップに合わせて PairOffsetMinLots を調整してください。
6. 運用のコツ
- まずはHYBRIDで挙動を掴み、比較としてWORSTでABテスト
- 高ボラや早朝などの高スプ帯では、相殺頻度が自然に鈍化（必要なら
MaxSpreadPips/MaxSpreadPipsOffsetを絞る） - ヘッジ利益が細切れになりがちなブローカーでは、
PairOffsetTargetMoneyを小さめ（例：5.0）に設定 - 維持率が苦しいときはWORST、建値前出しを急ぐときはIMPACT、ヒット率重視ならEASIEST
7. トラブルシューティング
- 相殺が動かない：
UsePairOffset=trueか、スプレッド条件（PairOffsetTightSpread／MaxSpreadPipsOffset）を確認 - 最小ロット未満で止まる：
PairOffsetMinLots／MinLotStepをブローカー仕様に合わせる - 相殺後に想定未達：
PairOffsetTargetMoneyを小さく／BudgetSafetyを上げる（例：0.92） - 連続拒否：
ActionCooldownSecを増やす、スプレッド条件を緩める
8. 変更履歴
- v1.2.3：WORST／HYBRID切替対応の安定化、相殺ブロックの整備、.set同梱（HYBRID／WORST）
- v1.2.1〜1.2.2：置換不具合修正（スコープ崩れ）／OnDeinit互換の調整
9. 免責・注意
本EAは損失の不発生を保証するものではありません。相場急変・週跨ぎギャップ・約定品質等により、相殺やヘッジ降ろしが計画通りに行われない場合があります。必ずデモ検証を経て、資金管理（ロット／最大含み損許容／維持率ガード）を設計してください。
参考情報（主要ソース）
・MQL4 公式：OrderSend（発注）
・MQL4 公式：OrderClose（決済）
・MQL4 公式：OrderModify（SL/TP修正）
・MQL4 公式：MarketInfo（銘柄情報）
・MetaTrader 4 ユーザーガイド
※本記事内の数値は目安です。ボラや約定品質・ロットステップ等に合わせて適宜調整してください。